2026年9月21日

雇用契約書 電子契約|労働条件通知書の電子化と入社手続きの流れ

Summary · 13 min read

雇用契約書は電子契約で締結できます。労働条件通知書の電磁的記録による交付の条件(労働者の同意)、内定から入社書類の一括送信までの流れ、本人確認と記録保存の考え方、入社書類ごとの可否と注意点の対照表を整理します。

結論から言えば、雇用契約書は電子契約で締結できます。日本では契約は原則として当事者の合意だけで成立し、雇用契約書の作成に書面や押印を義務づける規定はありません。あわせて、使用者が労働者に交付する義務のある労働条件通知書についても、労働基準法施行規則の改正により、労働者の同意を前提に電磁的記録(データ)による交付が認められています。つまり、内定から入社書類の回収まで、採用時の一連のやり取りを紙に頼らず完結させる設計が、法令の枠組みの中で可能です。

この記事では、雇用契約書と労働条件通知書の電子化の法的な位置づけ、入社手続きの電子化の具体的な流れ、本人確認と記録保存の考え方、入社書類ごとの可否と注意点の対照表、人事事務の削減とコンプライアンスの両立、運用開始前の注意点の順に整理します。制度運用の詳細は、厚生労働省の案内や社内の就業規則でご確認ください。

雇用契約書と労働条件通知書の電子化はどこまで認められているか

まず雇用契約書です。日本の契約法の大原則は形式の自由で、雇用契約も口頭でも成立します。実務で書面を交わすのは合意内容の証拠を残すためであり、その書面を電子文書に置き換えても、合意の成立そのものには影響しません。電子文書への署名の効力の土台になるのが電子署名法で、本人の意思に基づく電子署名が付された電磁的記録は真正に成立したものと推定される枠組みが用意されています。枠組みの全体像は電子署名法の解説で詳しく整理しています。

次に労働条件通知書です。こちらは雇用契約書と異なり、使用者に交付義務のある法定の書面です。交付の方法は、労働基準法施行規則の改正により、労働者の同意を前提として電磁的記録による交付が認められています。ここで重要なのが「労働者の同意が前提」という点です。本人がデータでの受け取りを希望しない場合や、受け取る環境を持たない場合には、紙での交付が必要になります。採用時の案内で交付方法を確認し、同意の記録を残す運用が欠かせません。

なお、労働に関わる書類は分野ごとに扱いが異なります。安全衛生の分野の書類には別の整理があり、労働安全衛生法の関係書類の電子化については労働安全衛生法と電子化の解説で個別に扱っています。本稿では採用・入社の書類に絞って進めます。

内定から入社書類の回収まで:入社手続きの電子化の標準的な流れ

電子化した入社手続きは、おおむね次の流れで設計します。

最初に、内定通知とあわせて雇用契約書の案を送付します。本人が内容を確認し、電子署名で合意すれば締結完了です。続けて、誓約書や個人情報の取り扱いに関する同意書といった入社書類をまとめて一括送信し、同じ画面の中で順に署名・提出してもらいます。人事側は送信した書類ごとの署名状況を一覧で追い、未完了の人にだけリマインドを送ります。

この流れが効くのは、距離のある採用です。他拠点やリモートでの入社では、紙の運用だと契約書の郵送往復だけで数日かかり、返送の遅れや押印漏れの確認に追われます。電子化すれば、住んでいる場所に関係なく同じ手順で締結でき、入社日までに書類を揃えきる設計が現実になります。初日に紙の回収に追われない分、受け入れの段取りも楽になります。

本人確認と記録の保存:同意の記録と保存期間の考え方

入社書類の電子化で押さえるべき管理点は2つです。

1つ目は本人確認です。署名の依頼が本人に届き、本人が操作したことを説明できる仕組みが要ります。電子契約サービスでは、メールでの認証やSMS、IDの確認など、文書の重要性に応じて確認の強さを選べるのが一般的で、雇用契約書のような重要文書では確認を強める運用が考えられます。加えて、誰が・いつ・どの文書に合意したかの記録が、締結済みの文書と一体で残ることが、後日の説明の土台になります。

2つ目は記録の保存です。労働関係の書類には、保存期間の定めのあるものがあります。関係書類の保存期間は法令や社内規定を確認したうえで、期間中はいつでも内容を確認し、必要に応じて出力・提示できる状態で保管する設計にします。労働者の同意の記録も同様で、電子交付への同意をいつどの形で取得したかが追跡できることが、コンプライアンス上の安心材料です。電子契約における証跡と保管の全体像は電子契約の全体像をまとめたガイドでも整理しています。

入社書類ごとの電子化の可否と注意点の対照表

ここまでの整理を、代表的な入社書類ごとの可否と注意点の対照表にまとめます。

書類可否注意点
雇用契約書可能双方の合意
労働条件通知書可能労働者の同意
誓約書・同意書可能記録の保存
身元保証書可能証跡の確保
就業規則の周知条件付き周知方法の確認
法令指定の書面要確認個別の規定確認

表の読み方は単純で、上4行は電子化して問題にならないことが一般的な書類、下2行は扱いに条件の付く書類です。就業規則の周知は周知の方法が問題になるため、社内の手続きとしての整え方が問われます。法令で書面の交付や保存が個別に定められた書類は、該当する規定の確認が先決です。

迷ったときは「交付義務のある法定書面か」「電子交付に明示の条件があるか」の2問で切り分けます。雇用契約書の条項そのものの設計、たとえば試用期間や秘密保持の書きぶりは書類の電子化とは別の論点で、契約書テンプレートと主要条項のガイドが参考になります。

人事事務の削減とコンプライアンスを両立させる運用の要点

電子化の効果は、作業時間の削減にとどまりません。印刷、製本、郵送、押印の依頼という定型の工数が消えることに加え、署名状況が一覧で見えるため、「誰の書類が未回収か」を台帳で管理する手間もなくなります。採用が集中する時期ほど効果は大きくなります。

同時に、コンプライアンスの側面も設計に含めます。合意の経緯が証跡として自動で残ること、閲覧・編集の権限を役割ごとに管理できること、使う書式をテンプレートで統一して条文のばらつきを防ぐこと。この3点は、監査や労務調査への備えにそのまま効きます。人事部門に限らず全社へ電子契約を広げていく際の進め方は、導入の7ステップの解説で工程ごとに整理しています。

運用開始前に確認すべき3つの注意点

最後に、導入前に社内で詰めておきたい点を3つ挙げます。

1つ目は就業規則・社内手続きの整備です。労働条件通知書の電子交付には労働者の同意が前提になるため、同意の取り方、同意しなかった場合の紙での交付手続きを、社内ルールとして明文化しておきます。

2つ目は個人情報の取り扱いです。入社書類は本人の氏名・住所に始まる個人情報のかたまりで、中には機微な情報を含むものもあります。保管場所、アクセス権限、退職後の保存と廃棄の運用を、個人情報保護の社内規定と整合させて設計します。

3つ目は紙との併用期間の設計です。紙での交付を希望する労働者への対応、電子化前に締結した紙の契約書の保管との住み分けを決めておかないと、現場で二重管理が常態化します。移行の区切りと保管のルールを最初に決めるのが、後の混乱を防ぐ近道です。

採用から退職まで、人事文書の1年を同じ基盤で:Nota Sign

4月の新卒の一括採用、通年で続く中途の採用、昇進や異動に伴う通知、そして退職に伴う書面。人事部門の1年を開くと、そこには文書の連なりがあります。その1年分の流れを一本の基盤に乗せる。法大大(FaDaDa)が提供する Nota Sign(ノタ・サイン)は、入社・異動・退職にまたがる人事文書を、作成から送信、署名、保管まで同じ場所で扱える電子契約プラットフォームです。

日本の電子署名法の枠組みに沿った署名設計に加え、海外の主要な法域の署名法制にも対応しているため、海外拠点での採用や外国籍人材との契約も同じ運用で扱えます。個人情報を多く含む人事文書だからこそ、文書と証跡はSOC 2 Type IIの第三者監査を受けた環境で管理されています。署名状況の進捗は書類ごとに一覧でき、合意の経緯も文書と同じ場所に残るため、未回収の追跡も労務への説明も同じ画面で完結します。料金は頭数ではなく利用のしかたに応じた設計のため、採用シーズンに関わる人が増えても費用の見通しは立てやすく、利用規模や要件に応じた見積もりのご相談にも対応しています。

入社手続きの電子化の具体的な設計や、既存の人事システムとの連携のご相談は、お問い合わせからご連絡ください。

よくある質問

雇用契約書は電子契約で有効ですか。

有効です。日本では契約は原則として形式の自由で、雇用契約書に書面や押印を義務づける規定はありません。電子署名法の枠組みのもと、本人の意思に基づく電子署名が付された電磁的記録は、真正に成立したものと推定されます。本人確認の記録などの証跡が適切に残る運用であれば、紙の契約書と同じ目的で利用できます。

労働条件通知書はデータで渡せますか。

渡せます。労働条件通知書は、労働基準法施行規則の改正により、労働者の同意を前提に電磁的記録による交付が認められています。同意の取得とその記録、データで受け取れない労働者への紙での交付手続きを、社内ルールとして整えておくことが運用の前提です。

アルバイトや派遣社員にも使えますか。

使えます。アルバイトやパートであっても雇用契約であることに変わりなく、同じ仕組みで締結できます。派遣社員の雇用契約は派遣元との間で結ぶものなので、派遣元が電子契約を運用していれば同様に扱えます。いずれの場合も、労働条件通知書の電子交付には本人の同意が前提になります。

労働者が紙での交付を希望した場合はどうすればいいですか。

紙で交付します。労働条件通知書の電子交付は労働者の同意が前提の制度なので、本人が希望しない場合は紙での交付が必要です。採用時の案内で交付方法を確認し、電子と紙が混在する期間の管理ルールを社内で決めておくと、現場の混乱を防げます。

締結した記録はどのくらいの期間保存すればいいですか。

書類の種類ごとに異なります。労働関係の書類には保存期間の定めのあるものがあり、関係書類の保存期間は法令や社内規定を確認したうえで決めてください。大切なのは、期間中いつでも内容を確認・提示できる状態で、証跡と一体で保管しておくことです。

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